2012/08/13

完成品



 電磁誘導を応用したマグネチックマイクロフォンやダイナミックマイクロフォンが発明されるまで、マイクロフォンの主役はカーボンマイクロフォンであっ た。1916(大正5)年に発行された『誰れにも出来る電氣工学』[西田・岡崎・小山共著、博愛館]には下図のような炭素棒を使ったマイクの実験が掲載さ れている。図中のイ、ロ、ハが炭素棒である。この回路の動作原理は、音声振動が炭素棒(ハ)に伝わり、(イ)ー(ハ)間、(ロ)ー(ハ)間の接触抵抗が変 化し、回路を流れる電流が変化する。これが受話器(ホ)に伝わり、音声を再現するというものである。

 

引用:西田順一・ 岡崎顧二郎,・小山憲次:第6編 電話機及通話法,誰にも出來る電氣工學,博愛館,p.80(1916)


 ここでは炭素棒の代わりにシャープペンシルの芯を使って同様の実験を行おうと試みた。インターネットで調べると、シャープペンシルの芯を使った同様の実 験はいくつか見られるし、炭素粒を使った実験も見られるが、いろいろ試してみたところ、接触部分が不安定なことがわかった。ここでは、比較的安定して実験 を行うことができる方法を解説したい。

■材料
 紙コップ(1)・シャープペンシルの芯(HBまたはB)・・・その他の芯では実験をしていない。追試を期待したい。
 トレーシングペーパー(またはハトロン紙):5cm角(1)・被覆より線(細い方が扱いやすい):10cm(2)

■道具等
 カッターナイフ・はさみ・ニッパ・千枚通し(またはキリ)・セロテープ・ のり

■製作方法

 (1)コップの底を円状に切り取る。  (2)コップの底の側壁に対角線方向に2カ所1mmくらいの穴をあける。
   
 (3)トレーシングペーパーを45φの円状に切り取り、コップの底に貼る。  (4)被覆線は、両端を2cmくらい被覆をはがしておく。
   
 (5)穴に芯を差し込み、接触部分をテープで固定する。 (芯は、振動板の上で重なるくらい。図では芯の間に間隔が見えるが、実際にはぴったり接触させる。
 

(6)芯により線を巻く。芯との接触が多くなるように巻くとよい。線は、セロテープでコップに固定する。
芯の接触部分

(7)できあがったら、テスターで線間の抵抗を測る。数Ωから十数Ωあればよい。
  (テスターがなければ、ここは省略してもよい)
  (ここで抵抗値がないということは、芯同士がきちんと接触していないので、テープをはがしてやり直す)

■マイクにむかって話してみよう
図のように接続する。

使えるイヤホン 使えないイヤホン

電池の極性は気にしなくてよい。すべて接続してから、イヤホンを耳にあてる。(接触時のノイズで耳を痛めることがあるため)
マイクに向かって話しかければ、イヤホンから音が聞こえる。

【注意】
マイク、イヤホンの抵抗が小さいので、長時間使用すると、電池が発熱する。短時間(1分以内)の使用にとどめたほうがよい。

■アンプにつないでみよう
図のように接続する。

「トランス」は、トランジスタラジオの出力部に使われているもの。トランジスタにつながる"IN"と、スピーカーにつながる"OUT"を逆に使用する。


おぎのかずとし (大阪工業大学)

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