中島 尚正:人工物と設計 ,放送大学教育振興会 (2004)
 ※入手は古本でないと難しいようです。

 技術の授業では構想・設計は重要な柱となっている。しかし,設計というとすぐに製図をイメージする人も多いのでないだろうか。そんな先生,学生らにお勧めがこの本である。本書はリテラシー教育として設計を取り上げ,身近な事例に基づいて設計の過程や仕組みについて様々な観点から説明している。構想や設計をどのようにとらえ,技術教育に位置づけたら良いのか。それを考える上でも参考になる内容である。放送大学教材として編集されているため,章ごとに内容もまとめられて読みやすいであろう。
 特にお勧めは「第3章 設計の過程」である。ここで設計とは何かと定義付け,概念設計から生産設計にいたるプロセスについて具体例を用いて解説しているので,理解しやすい。また,設計とアダプション(仮説形成)として,設計の思考についても紹介している。構想・設計を技術的思考の観点から考える機会ともなるのではないだろうか。授業時間数が少ない中だからこそ,技術の基本である設計について考えを深めることが,質の高い授業作りにつながるのではないだろうか。


村松浩幸(信州大)

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