中学2年生の3月の最後,2時間で特許の学習に取り組みました。「特許を検索してみました。おもしろいのがたくさんありましたね。」それだけでもそこそこ充実した学習になりますが,時代はアクティブラーニングとか主体的・対話的で深い学びということで,活動を通して特許とはどんなものなのかを実感してもらうとってもライトな授業実践です。

場所はPC室です。

★1時間目 J-PlatPat( https://www.j-platpat.inpit.go.jp/ )

特許を検索できるJ-PlatPatの使い方を説明し,次の時間にその特許を説明する前提で,興味のある特許を調べて1つか2つの特許をピックアップして,レポートにその概要をまとめます。まとめ終わらなかった生徒は,宿題です。特許庁が管理している日本の特許がほぼほぼ全て検索できます。もし,使われたことがない方がいるなら,今すぐ試してみるべきですよ!

レポート作成時には,特許に書かれている特許特有の難しい表記をそのまま写すのではなく,特許の内容を理解して,そのわかったことを他の友達にわかるように自分の言葉で説明させます。

★2時間目 特許発表会

もちろん自分の出願した特許ではありません。自分が気に入った特許です。自分の部活の道具であったり,自分の趣味に関係するものだったり,面白そうと思ったものだったり,生徒によって同じものを選んでしまうことはほとんどありません。最初の10分間で,発表の準備をさせます。
発表会は一人あたり2分発表,1分質疑でトータル3分を×4回で4人班で全員が発表です。その時にポイントは発表者以外の生徒には絶対パソコンを操作させないこと。鉛筆ももたせないことです。参観する生徒は発表者の後ろに立たせました。発表者だけがパソコンの画面を操作して,図面を拡大縮小しながらその特許の詳細を説明させます。2分発表できない場合は,参観者が学びが深まるような質問をしよう!とよびかけます。

続いて代表レポートを班ごとに決めさせます。代表レポートの選考基準は,頭がよいとか,発表がうまいではないと語り,おもしろい,とはいってもfunではなくinterestingという意味で選考してほしいと伝えます。前班後半にわけて4班づつ代表に選ばれた生徒だけがその場に残ってポスターセッションを開始します。わずか2分ではありますが,生徒は好きなところに聞きにいきます。一部の生徒は気をつかっているかな・・・。2分が2回だけです。

★最後の5分で,教師が授業の目的を語ります。

「特許ってもっと難しいものだと思っていませんでしたか。調べてわかったと思うけど,エジソンの電球とかライト兄弟の飛行機のような革新的なものも特許だけど,自分でもできるような身の回りにあるようなものが特許出願されていたでしょう。」
「最近3Dプリンタがよく使われるようになったよね。あれは,3Dプリンタの基本特許が切れたことで誰でもつくることができたから一気に広まったって知ってましたか。さきほど見せたダイソンの羽根のない扇風機,今はダイソンだけが独占的に作ることができるけど,おそらく20年後にはいろんなメーカーが作っているんだろうね。特許は,アイディアを真似されないようにという目的もあるけど,それ以上に大切なのはそれが公開されていていつか必ず全ての人にとっての財産になるということなんだ。」
「君たちのかいた3D-CADの図には著作権があったよね。それを自由に使ってくださいとCCBYのマークをつけて提出したでしょう。あれも同じ考え方だということわかるかな。特許や著作物に限らず,人間が生み出した全てのものが,知的財産なんだよ。今日の授業で,この知的財産という言葉がわかってもらえたとしたら,それで十分だと思うよ。」
「実は,この授業はこれまで2年間の学習のまとめなんだ。7年生の時に,何を参考にしたか必ず書いて木製品を製作したでしょう。あれも,同じ考え方だって今わかるんじゃないかな。」

私たちの生活はこうした誰かが生み出したアイディアに支えられている。そう実感してもらうためには,活動を通して自ら気付く授業展開が必要です。自分で調べて自分で発表してみないと実感として理解できません。
 知的財産権の分類を一生懸命暗記させたとしても,何の実感もない知識ははげ落ちるだけです。でも,自分で調べ発表してこの特許はこうなんじゃないかと語り合うことで,一人一人の生徒に知的財産の実感をもたせることができます。     

投稿者:茨城県(中学校) 川俣 純


 

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